
毎年、3月28日
薬師寺では「お身拭い」が執り行われる。
3月30日から4月5日までの
「修二会花会式」の前に
本尊の薬師如来をはじめ全ての仏様を
拭き清めるのである。
今年は
スケジュールがうまく調整できたので
本当に久しぶりに
「お身拭い」の当日に
薬師寺をたずねることができた。
西ノ京の駅に降りたとき
すこし盛りは過ぎているけれど
まだ美しく咲いている梅の花、
そして
すこし雲はあるものの
やわらかい日差しと青い空に
思わず深呼吸をし、
薬師寺に「戻ってきた・・・・・・」という
きもちに、なった。
私と、薬師寺さんとの関わりは
50年近くになる。
学生時代に友人と興した史蹟研究会で
ただ、史蹟を見学するだけでなく
もっと深く、寺院の「こころ」に触れたいと
薬師寺さんに直談判したのがはじまりだ。
その時、受け入れてくださったのが
橋本凝胤猊下であり
高田好胤猊下であった。
私たちは
「修二会花会式」の時期には
庫裏で若い僧たちと寝食を共にし
行事に関わる様々を手伝うのだ。
そういう意味で
とてもなつかしく
また、身の引き締まるおもいの、行事である。
当時をおもいながら
「お身拭い」がはじまるのを待っていると
急に、
何度灯明をともしても、
消えてしまうほどの風が吹きはじめた。
管主や僧侶が入堂し
読経がひびく中
薬師如来や日光、月光菩薩が
拭き清められていく。
その時、激しく雨が降りだした。
大粒の、雨。
そのうちに、雷鳴。
そして、さらに強く吹く風。
はじめて経験する
春の嵐のお身拭い、である。
「花会式」の経典は
独特のリズムと節回しがあり
それに併せて、
管主が立ち上がるという所作があるのだが
まるでそこにあわせるかのように
雷鳴がとどろく。
金堂を吹き渡る風と雷鳴。
私の中のもやもやとしたものを
吹き飛ばし、払ってくれるような
そんな気が、した。
そして、
初めて対面したときの
橋本凝胤猊下の
おだやかだが、するどい眼差しと
側近く、いさせてくださった
高田好胤猊下の
厳しくも、機知に富むやさしさを
おもいだし
身震いするほどの緊張感と
体の奥から湧きあがってくる力を
自分の中に感じた。
あの震災から1年が過ぎ、
9回目の当選から1年が経とうとし、
国政も区政も
混乱が収束するどころか
問題が増しているようにも見える、今、
これまでと変わらぬ信念を持ち、
迷わず、着実に
仕事に邁進せよと、
薬師寺さんに背中を押されたのだ、とおもう。
伽藍をあとに
西ノ京の駅に向かうころ
風は幾分おさまり
うっすらと
日が差しはじめていた。
薬師寺にて
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